【つくり手の思い】ARTIFACT(アーティファクト)ランドセルとは?
目次
従来のランドセルのイメージを覆す、独創性あふれるデザインと機能性をカタチにしたアーティファクト。唯一無二の製品が誕生するまでの経緯、開発にまつわる秘話を、ブランド責任者の橋本昌樹氏に聞きました。
CONCEPT
――開発時の思いは?
子どもたちが見ても、大人が見てもかっこいいと思えるランドセル。そして子どもたちが成長するにつれ、より似合っていくようなランドセルを作りたいというのが最初の思いでした。
これまでのランドセルの選択肢は、大きく二つに分かれていました。一つは、天然皮革の素材感を生かした職人の手作りのイメージが強い「工房系」、そしてもう一つはカラーバリエーションが豊富で、入学時の子どもたちが喜ぶようなデザインで機能が充実している「大手ブランド系」と呼ばれるものです。シェアで見ると工房系が3割、あとの7割が大手ブランド系といったところでしょうか。
新ブランドの立ち上げを考えたときに、そのどちらとも異なるランドセルの新しい選択肢を作りたいと考えました。
――アーティファクトのコンセプトは?
何が正しいかどうかとか、人と一緒がいいという考え方ではなく、個性を生かすことが求められる時代だと思っています。ステム教育など、専門分野の能力を伸ばす教育が注目されていますし、アートへの感性を磨くことも大事だと考えています。そういった意味では、時代にあっているランドセルがないと感じていたので、多様性に対して許容度が大きいものにしたかった。それを形にしたのがアーティファクトです。
――デザインで重視した点は?
本革はどうしても重量が重くなってしまうので機能性に優れた人工皮革を使用して、デザインは子どもらしいポップなものでもなく、デザインやアートに対する感度が高い子どもたちに好んでもらえるようなものがいいなと。近未来的な、無機質なイメージ。ミニマルだけれども、完成されたデザインのランドセルを作りたいという方向性をデザイナーに伝えました。
デザインも加工も、今までやったことのないことにチャレンジしています。色をより鮮やかに見せるために、素押しして、その上から色押しして。時には逆の加工をしたり。これだけの手間隙をかけることは、どのメーカーもできないと思います。ミリ単位のずれも許されないわけで、実際に今も工場に嫌がられていますし(笑)、それだけ繊細な作業から生まれているんです。
PROCESS
――デザイナーや製造工場の反応は?
私のイメージを具現化するとなると、これまでランドセルには必ずついていたかぶせ部分の鋲(びょう)が邪魔になるというのがデザイナーからの指摘でした。鋲は素材を接着させるため、そして強度を保つためには従来必須とされてきました。製造するのは、日本トップクラスの生産本数を誇る工場。鋲を見せないランドセルを作るというのは、当然手間暇はかかるし、製造工程を変えてまでやることに反対意見はありました。しかし、製造責任者と話し合って、鋲を表に出さない方法をなんとか見つけることができました。鋲がなくなったことで、デザインの自由度はグンと広がりました。
――はじめて完成したモデルは?
Angle(アングル)
Glossy(グロッシー)
Momentum(モメンタム)
最初にできたのは、「Angle(アングル)」です。私の中では、無機質だけどかっこいいランドセルをイメージして、アシンメトリーなデザインの要素を加えて出来上がりました。次に製作したのが、このアングルの女の子向けバージョンと言える「Glossy(グロッシー)」です。小さい幾何学模様でモチーフを作り、艶のあるクラリーノに合わせました。初年度はこの二つに加えて、スピード感、勢いのあるイメージ「Momentum(モメンタム)」の3モデルからスタートしました。
これまでランドセルの選択肢はたくさんありましたが、最初にお話したように大きく2つに別れていたので別の選択肢を作りたかったんです。クリエイティビティの高いもので、かつ子どもたちの立場になると使いやすさは譲れない。機能性は絶対に妥協したくなかったんです。工房系は、手作り感があってオシャレだけど、機能性の優先順位はあまり高くない。機能性とデザイン性、両立できる形は必ずあると思い、それを実現したのが現在の7モデルです。
VISION
――今後の展開は?
ファーストシーズンの3モデルが出来上がった時点で、いけるなという手応えは感じていました。ご覧の通り、外国人のモデルの子が持っても違和感がまったくなくて、世界でも受け入れられるグローバルなデザインに仕上がっていると自負しています。今後は、バリエーションを増やしていくというよりも、選りすぐって、より洗練させていくことでアーティファクトらしさを表現していきたいと思っています。